製品・技術に戻る
ソリューション

抗がん剤(医薬品)の副作用の低減

薬剤そのものをナノ粒子化する「キャリアフリー」のドラッグデリバリー。がん細胞内で選択的に薬剤を放出し、高い薬効と低い副作用の両立を目指します。

抗がん剤の副作用という課題

化学療法における副作用は、がん治療において依然として深刻な問題です。抗がん剤は主にがん細胞のDNAを標的としますが、同時に正常細胞のDNAも傷つけてしまうため、腎毒性・肝毒性・血液毒性など様々な副作用を引き起こします。薬剤分子が全身の正常組織に行き渡ってしまうことが、副作用の大きな要因です。

また、抗がん剤の多くは水に溶けにくい(疎水性)という性質を持ち、そのままでは投与できません。このため、薬剤を運ぶための「キャリア」が用いられてきましたが、キャリアには次のような課題があります。

  • 薬物含有率の低下: リポソームなどのキャリアで包む方式では、製剤に占める薬剤の割合が低くなり、効果を得るために大量の投与が必要になります
  • キャリア由来の副作用: 薬剤以外の余分な材料が体内に入ることで、それ自体が副作用を誘発する可能性があります
  • 標的特異性の低下: 親水基の修飾などにより、薬剤本来の受容体親和性が損なわれることがあります
  • 製造コストの増加: 複雑なリポソーム化などの工程がコストを押し上げます

NanoFrontierのアプローチ

NanoFrontierは、東北大学で30年以上にわたり蓄積されてきたナノ粒子生成技術を基盤に、キャリアを一切使わず、薬剤そのものをナノ粒子化するドラッグデリバリーに取り組んでいます。

従来のキャリア方式とキャリアフリー方式の比較: キャリアで包む方式は薬物含有率が低く余分な材料が課題となるのに対し、薬剤分子だけでナノ粒子化する方式は含有率が高く余分な材料がない

  • キャリアフリー: 薬剤分子だけでナノ粒子を構成するため、薬物含有率が高く、キャリア由来の毒性やコストを回避できます
  • 水溶性の付与: 疎水性の薬剤を、化学構造を変えることなく水中に安定分散させられます
  • がん組織への集積: がん組織の血管には正常組織にはない大きな隙間があり、適切なサイズに制御されたナノ粒子はこの隙間を通過して腫瘍に集積しやすくなります(EPR効果)
  • がん細胞内での選択的な放出: がん細胞内に高濃度で存在する物質に反応して薬剤が放出される仕組みを分子設計に組み込むことで、正常細胞への影響を抑えられます

研究成果:ナノ・プロドラッグ

当社技術顧問である笠井均教授(東北大学多元物質科学研究所)の研究グループは、この考え方を実証する成果を2024年に学術誌 Nanoscale に発表しています。

この研究では、抗がん剤SN-38の分子を2つつなげたプロドラッグのみで構成されるナノ粒子(ナノ・プロドラッグ)を作製しました。ポリエチレングリコール(PEG)やその他の添加剤を一切使用しない設計です。

  • がん細胞内で選択的に薬剤を放出: 分子をつなぐ結合は血中では安定を保つ一方、がん細胞内に高濃度で存在するグルタチオン(正常細胞の数倍、細胞外の約1000倍)によって切断され、活性本体のSN-38を放出します
  • 高い分散安定性: 添加剤なしで生理食塩水中に長期間安定に分散します
  • 動物実験での高い抗腫瘍活性: 同量のSN-38換算で比較した動物実験において、臨床で使用されているSN-38のプロドラッグ「イリノテカン」よりも強く腫瘍の増殖を抑制しました

この成果は、ナノ粒子のサイズ効果による腫瘍への集積性の向上と、標的を定めた薬剤放出メカニズムの組み合わせによって実現されたものです。

Tanita, K., Koseki, Y., Kasai, H. et al. “Carrier-free nano-prodrugs for minimally invasive cancer therapy”, Nanoscale, 2024, 16, 15256.

想定されるユースケース

想定される企業・組織 活用ニーズ
製薬会社(研究開発・製剤部門) 難水溶性の候補化合物のナノ製剤化。キャリアフリー化による薬物含有率の向上と副作用低減
創薬ベンチャー 有望だが水に溶けず開発が停滞している化合物の実用化
CDMO・製剤受託企業 ナノ粒子製剤の製造技術の獲得・受託サービスの拡充
大学・研究機関 難水溶性化合物の動物実験・薬効評価に向けた分散液の調製
農薬・機能性材料メーカー 医薬品以外の難水溶性化合物への水溶性付与(農薬など)

協業の進め方

難水溶性でお困りの化合物について、ナノ粒子化と水中分散が可能かどうかを確認する技術検証からスタートできます。化合物をご提供いただき、当社のラボでナノ粒子化の可否と分散安定性を評価します。「この化合物を水に分散させたい」というご相談からお気軽にお寄せください。

お問い合わせ

本ソリューションの詳細資料のご請求、共同研究・技術検証のご相談は、お問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。

その他のソリューション