潤滑油の金属摩耗の低減
毒性が懸念されるモリブデン系添加剤を使わず、ナノ粒子の添加により潤滑油の摩擦・摩耗を大幅に低減。機械の長寿命化・省エネルギーと、環境負荷の低減を両立します。
摩擦・摩耗と潤滑油添加剤の役割
エンジン、変速機、軸受、ギア、工作機械——あらゆる機械の内部では金属同士が擦れ合っており、摩擦によるエネルギー損失と摩耗による部品の劣化が、機械の寿命・効率・保守コストを左右します。
このため潤滑油には、摩擦を低減する「摩擦調整剤」や摩耗を防ぐ「摩耗防止剤」といった添加剤が配合されており、潤滑油の性能は添加剤によって決まると言っても過言ではありません。摩擦調整剤の世界市場は2030年に向けて年平均8%前後で成長すると予測されており、機械の電動化・高効率化の流れの中で、その重要性はさらに高まっています。
モリブデン系添加剤の課題
摩擦調整剤の代表格として、MoDTC(モリブデンジチオカーバメート)などの有機モリブデン系添加剤が自動車用エンジンオイルを中心に広く使われてきました。優れた摩擦低減性能を持つ一方で、次のような課題が指摘されています。
- 毒性・環境負荷への懸念: モリブデン化合物の毒性・環境影響への懸念から、欧州を中心に使用を控える動きが広がりつつあります
- 排ガス後処理装置への悪影響: 硫黄・リンを含む添加剤は、触媒やDPF(粒子状物質フィルター)を劣化させるため、低SAPS化(硫酸灰分・リン・硫黄の低減)が業界全体の流れとなっています
- 代替技術の不在: モリブデンフリーで同等以上の摩耗低減性能を持つ添加剤への需要が高まる一方、決定的な代替はまだ確立されていません
NanoFrontierのアプローチ
NanoFrontierは、独自のナノ粒子化技術により、モリブデンを使用せずに金属摩耗を大幅に低減するナノ粒子添加剤の開発に取り組んでいます。
ナノ粒子を潤滑油に添加すると、擦れ合う金属表面の間で次のような働きをすることが知られており、摩擦・摩耗の低減に寄与します。
- 転がり効果: 微細な粒子がベアリングのように働き、滑り摩擦を転がり摩擦に変える
- 表面修復効果: 摩耗した表面の凹みに粒子が入り込み、表面の粗さを軽減する
- ポリッシング効果: 表面の突起をなめらかにし、局所的な摩耗の起点を減らす
- 保護膜の形成: 金属表面に保護膜(トライボフィルム)を形成し、金属同士の直接接触を防ぐ
実際に、ナノ粒子の添加によって潤滑油の摩耗・摩擦を大幅に低減できることは、近年の研究文献でも報告されています。
| 文献の例 | ベースオイル | 添加量 | 摩耗痕径 | 摩擦係数 |
|---|---|---|---|---|
| Scientific Reports誌(2023年) | ディーゼルエンジンオイル(20W40) | 0.05 wt% | 約36%低減 | 約68%低減 |
| Applied Sciences誌(2025年) | エンジンオイル(SAE 20W-50) | 2% | 1.744 mm → 0.875 mm(ほぼ半減) | 0.119 → 0.085(約29%低減) |
いずれも金属系ナノ粒子を用いた公開文献の例です。ナノ粒子の種類・添加量・条件により効果は異なります。
当社は、数十nmで粒径を精密に制御し、凝集を抑えて潤滑油中に安定分散させる独自技術により、この摩耗低減効果をモリブデンフリーの添加剤として実用化することを目指しています。
想定されるユースケース
| 想定される企業・組織 | 活用ニーズ |
|---|---|
| 潤滑油・添加剤メーカー | モリブデンフリー摩擦調整剤の共同開発、既存製品の高機能化・環境対応 |
| 自動車・輸送機器メーカー | エンジンオイル・駆動系フルードの摩耗低減による長寿命化と燃費・電費の改善 |
| 産業機械・工作機械メーカー | 軸受・ギア・摺動部の摩耗低減によるメンテナンス周期の延長 |
| 風力発電・インフラ事業者 | ギアボックスなど交換が困難な部位の長寿命化による稼働率向上 |
| 船舶・建設機械メーカー | 高負荷・過酷環境下で使用される機械の寿命延長と保守コスト削減 |
協業の進め方
お客様が現在使用されている潤滑油・基油をベースに、ナノ粒子の分散と摩擦・摩耗特性の変化を確認する小規模な技術検証からスタートし、段階的に実用化検証を進める形での協業が可能です。「この潤滑油の摩耗性能を上げたい」「モリブデンフリー化したい」といったご相談からお気軽にお寄せください。
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